劇場の誕生ストーリー

劇場の誕生ストーリー
日本の伝統芸能が滅び
すべてが過去の遺産となる未来

日本の伝統芸能が滅び、
すべてが過去の遺産となる未来

このままでは、日本の伝統芸能は滅び、すべてが過去の遺産となります。それも、そう遠くない未来に。

これは、誇張ではなく現実に起きている問題です。芸能を支える観客と、芸能を継承する演者、どちらも減少に歯止めがかからず、このコロナ禍でさらにそのトレンドが加速しています。

最近の世論調査(令和3年度 文化庁「文化に対する世論調査」)では、伝統芸能を直接鑑賞した人の割合はコロナ前で4.7%で、コロナ後では1.6%にまで落ち込んでいます。平成8年の同調査では13.2%だったことを考えると、コロナ前でも既に半分以下になっていることが分かります。伝統芸能の代表格である歌舞伎でさえも、近年では空席が目立ち、年齢層の高さも目に付きます。

伝統芸能を直接鑑賞した人の割合

歌舞伎より知名度が低い、長唄や、小唄、雅楽等の伝統邦楽の観客数は更に深刻で、観客は演者の知人ばかりであることも珍しくありません。

観客の減少に伴い、演者も急激に減少しています。歌舞伎の伴奏音楽として知られる長唄では、演者の8割以上が70代以上となっているほか、若い世代の演者が生計を立てるほど稼ぐことができないため、プロの演奏レベルに達していても引退を余儀なくされるケースが後を絶ちません。

さらに、このコロナ禍で公演回数が激減し、観客と演者の減少に拍車をかけています。感染が落ち着けば、観客は戻ってくるかもしれませんが、一度引退してしまった演者は演奏技術が鈍ってしまい、元に戻ることは難しいです。

日本文化を感じ、
歴史を体験する機会が消滅する

伝統芸能が滅ぶと何が起きるのでしょうか。

一つ目に、身近に日本文化を感じる機会がなくなります。実は、現代でも多くの人が身近なところで伝統芸能を目にしたり耳にしたりしているのです。例えば、お正月はTV番組でも伝統邦楽の演奏がBGMに頻繁に使われており、三が日は毎日と言っていいほど耳にしています。着物や門松と共に、伝統邦楽が正月の文化を形作っているのです。また、様々な地域のお祭りで和太鼓や尺八などの演奏で神輿を盛り上げることも多く、日本の季節を代表するようなイベントで、伝統芸能は良き引き立て役として活躍しています。

そして二つ目に、歴史を体験する機会がなくなります。ヨーロッパでは伝統的な街並みが残されているので、街歩きをするだけで中世ヨーロッパを疑似体験でき、古の英雄に思いを馳せることも可能です。

一方、日本は明治維新以降、急速な西洋化や震災、また戦争を経て、古くからの街並みがほとんどなくなってしまいました。特に東京はその傾向が顕著で、江戸時代の姿が保存されているのは寺社仏閣と皇居の一部程度で、歴史を体験できる場所が極めて少ないため、侍や江戸文化に思いを馳せることができません。このような現状において、現代でも江戸時代以前の日本人と同じ体験ができる伝統芸能は貴重な存在であり、観光資源としても大きなポテンシャルを持っていると考えられます。

滅びゆく伝統芸能の
「未来を変える」

滅びゆく伝統芸能の未来を変え、新たな希望の道を創っていくために、私たちは新たな劇場を設立するプロジェクトをスタートさせました。

伝統芸能を復興させるには、観客を増やし、同時に演者を増やす必要があります。そして、観客と演者が出会う場所がなければなりません。

そこで私たちは、江戸の中心「九段下」に伝統芸能に特化した劇場を設立し、伝統芸能を見たい観客がいつでも見に行くことができ、伝統芸能を演じたい演者がいつでも演じられる場所を創ることにしました。

もちろん、エンターテイメントが多様化した現代において、場所を造るだけで観客が増えるとは限りません。恐竜が地球の環境変化に耐えられず滅んだように、伝統芸能も環境の変化にさらされ滅びようとしています。キリンが環境に適合し、首を伸ばす進化を遂げたことで生き延びられたように、伝統芸能も現代の環境変化に合わせて進化していくことが必要だと考えています。この劇場は、その進化を起こす中心地になることを目指します。例えば、異なる伝統芸能の新たな組み合わせや、最新の映像技術をつかった演出、VTuberとのコラボレーション、J-PopやJazz等のポピュラー音楽との融合など、アイディアは無限にあります。日本独自の伝統芸能が進化することで、国内に留まらず、世界に認められるエンターテイメントに発展していく可能性も十分にあります。

滅びゆく伝統芸能の未来を変え、新たな希望の道を創っていくために、「鶴めいホール」は誕生致しました。ぜひ、これからもご支援、ご協力をお願い致します。